王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

「庭を案内しよう」


晩餐を終えるとランバートのそのひとことによって、4人は一緒に中庭を散策することになった。


ヴェッカーズ伯爵家の屋敷は、本館と別館に棟が分かれていて、エリナたちがいるのは本館のほうだ。

客間や明日の収穫祭のメイン会場となる舞踏ホールを含め、主だった部屋はすべて本館に集まっている。

別館は使用人たちの部屋や衣装室などがほとんどだが、ランバートが寛ぐための自室や書斎もあちらにもおいてあり、どちらの棟でも生活できるようになっていた。


その本館と別館の間には広くて立派な中庭があり、幾人もの庭師によって隅々まで手入れされている。

ヴェッカーズ伯爵邸が夜会の会場となるときは、踊りを終えた気の合う男女が次に向かうのは大抵この庭だった。

宮廷での舞踏会のときほど庭園での逢瀬が名物となっているわけではないが、ランバートはそういったことにどのパーティーの主催者より寛大なのだ。


エリナたちが庭に出たとき、一日が長いこの国でも、ようやく陽が落ちる頃だった。


「ぜひ見せたいものがある」


エリナはぴったりと横についてくるキットと共に夕焼けに染まる立派な庭園に見入っていたが、ランバートに呼ばれて渋々その場を離れた。
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