王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
ランバートが案内したのは、庭の奥まったところにある畑のような場所で、調理場の裏手からすぐに出られるようになっている。
畑のまわりには警備のためか私兵が立っていて、ランバートとアリスが現れるとこちらに向かって敬礼をした。
(ここって、まさか……)
ただの畑番にしては、警備の数が多すぎる。
キットもそのことに勘付いているようで、辺りを慎重に見回している。
(いつか言ってた盗むってやつ、本当にやるつもりなのかな)
エリナの側を番犬のように付いてまわって離れなかったキットの注意が逸れたその瞬間、ランバートがエリナの腕を掴んで自分の隣に引き寄せた。
「きゃ」
「味見させてやろう」
柔らかな唇にランバートの指で何かが押し付けられ、エリナは反射的にそれをパクりと食べてしまう。
「あっ……甘い……」
おかしなものならすぐに吐き出してやろうと思ったのだが、予想以上に甘くて美味しい。
ランバートはエリナの反応を見て満足そうにクツクツと笑い、腰の高さまで茂った緑の中から、エリナに食べさせたのと同じ白い実をもぎ取った。
「お前が今食べたものが毎年できる白いラズベリーだ。これが13年に一度、収穫祭の夜の18時になると赤紫に色付く。それが収穫の合図だ」