王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
ということは、もし今ここでこっそり白いラズベリーを盗んだとしても意味がないということだ。
「明日の18時……」
エリナは頭の中でとっさに計算する。
今もドレスの隠しに入れてあるはちみつとブルーローズが混ざり合った小瓶に、ラズベリーを入れられるのは早くても18時以降。
それから禁断の青い果実が完成するまでには13時間かかるのだ。
これだけの警備兵がいれば収穫のときに盗むのも難しいだろうし、国王の使者たちが上手くラズベリーを譲ってもらえたとしても、8日目の日の出には間に合わない。
「あのっ、私……」
どうしても、収穫後すぐにラズベリーを手に入れなければならない。
エリナが懇願の想いで必死さを滲ませてランバートを見上げると、彼はその緑がかった褐色の瞳を細め、エリナの細い腰を引き寄せた。
「わかっている。お前が私を楽しませると約束するなら、最初に収穫されたものをお前にやろう」
そしてエリナの左手を持ち上げ、指先に恭しくキスをした。
エリナにだけ聞こえるように、静かな声で囁きかける。
「アレの完成には一晩かかるだろ。明日の夜、ふたりでゆっくりと完成を待とう」
エリナは一瞬強く唇を噛み締め、息を飲んで小さく頷いた。