王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
まったく考えの読めないランバートだが、その眼差しは、ウィルフレッドがエリナに向けるものと似ているのではないだろうか。
エリナはランバートの隣でもぞもぞと居住まいを正し、ちょこんと座り直して、恐る恐る聞いてみた。
「あの……義妹さんとは、小さい頃から……?」
「ああ。と言っても、アリスが養子になった頃、私はもう17歳だったから、アリスは私の幼い頃を知らないが」
昔を懐かしむように話すランバートの声は低く静かで、とても穏やかだ。
彼がアリスのことを最初に"義妹のような、義娘のような"と言ったのは、その歳の差からなのだろうか。
(義妹ってことは、先代のヴェッカーズ伯爵が養子として彼女を引き取ったってことだよね)
ランバートはその容姿に加えて第一印象はとても軽薄で最低な男だったし、社交界での噂も決していいものではない。
ラズベリーと引き換えにエリナの身を要求した彼が、噂通りの享楽的で交遊の派手なヴェッカーズ伯爵だとしたら、今エリナの目の前にいるのは誰なんだろう。
「アリスは無愛想なところもあるが、思いやりのあるいい娘だよ」
ランバートがアリスの話をしたり、エリナにウィルフレッドの話を聞いたりすると、エリナの緊張も次第に弛み、茜色の庭園にそっと夜が舞い降りていった。