王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
昔気質で頑固な父は、そもそも王家への忠誠心も薄いし、ランス家やヴェッカーズ家とも仲が良くない。
その上、特別可愛がってきた18歳になる美しい娘を、一回りも歳上のあのいけ好かない男がたぶらかしたと、散々ウィルフレッドに文句を付けていたが、母に宥められ、収穫祭へ行くこともダメだとは言わなかった。
おそらく今、父とウィルフレッドを引き合わせれば一発殴るくらいのことは平気ですると思うが、それでもウェンディの好きにさせてくれることが嬉しかった。
もし今夜の収穫祭で、ウィルフレッドともう一度出会えたら。
彼がウェンディに近付いた目的であるはちみつを手にした今でも、もう一度あの琥珀色の優しい瞳を自分に向けてくれるなら。
それなら、どんなに傷付こうとも、もう一度彼と向き合ってみようと思うのだ。
ウェンディはこれまで、誰も本当の自分を見てくれないと思っていたが、それは自分が相手を見ようとしなかったからなのだ。
コールリッジ伯爵家の娘というフィルターをかけていたのは、他でもない自分だった。
(だけど、ウィルフレッドさまは違う)
彼がウェンディのことをどういう目で見ていたのかはわからないが、ウェンディのほうは、ただまっすぐに彼と向き合っていた。