王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
できればもっとロマンチックな状況で、エリナの合意の上でうっとりするようなキスをしてやりたかったが、仕方がない。
身をよじって逃げようとするエリナをきつく抱きしめ、舌を絡め取り、強引に口内に押し入る。
エリナの舌の上で甘酸っぱい果実が弾ける感触がして、彼女の瞳から涙がこぼれ落ちた。
(泣くなよ、瑛莉菜)
これがふたりの、初めてのキスだ。
目が覚めたら、彼女は怒るだろうか。
できることなら、もっと優しく抱きしめて、甘くとろけるように、ゆっくりとその唇を貪りたい。
そうは思うものの、キットは涙で濡れたエリナの頬をなでて、ふっと笑みをこぼした。
世話のかかる兄と、放っておけないその担当編集者のせいで、小説の世界に潜り込むことになってしまった。
それでも、最初はただなんとなく目を離せない存在だった彼女が、こんなにも愛おしく大切な人になって、そして同じように自分を見つめてくれていたのだから。
この7日間も、そう悪くはなかった。
窓から差し込む眩しいほどの朝日を背中に浴び、最後にぎゅっと腕の中のエリナを抱きしめて、キットは再び意識を手放した。