王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
稀斗が泣き出しそうな瑛莉菜の側へやってきて、腰に腕を絡め、頭のてっぺんにキスを落とした。
「どうすんの、稀斗のバカ」
「悪い。でも兄貴ならお前を騙してでも絶対やる。前回で味を占めてんだよ。それなら、ひとりで行かせるわけにはいかないだろ」
身をよじって暴れる瑛莉菜の髪をすいて、勢いで合意してしまったことに少し罰の悪そうな表情を見せる。
瑛莉菜の頬をなで、いつも稀斗を虜にする濃い茶色の瞳を覗き込んだ。
「代わりに、俺がひとりで行ってもいいけど」
しょんぼりと困ったように眉をハの字にしているが、瑛莉菜にはわかる。
稀斗は瑛莉菜が何と言うかわかっているくせに、どうしても瑛莉菜の口から言わせたいのだ。
本当にズルくて、それでも敵わなくて、どうしようもなく好き。
「……ダメ」
瑛莉菜が唇を尖らせて拗ねると、稀斗はいつも通り嬉しそうな顔をした。
「絶対お前をひとりにはしないから。好きだよ、瑛莉菜」
こんなことで絆されてしまうほど、自分はこの男に惚れているのだろうか。