王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
瑛莉菜はうんざりするくらいに膨れ上がる気持ちをいつも持て余し、それを受け止めてくれる稀斗に、さらに身を焦がされるばかりだ。
「キスしていい?」
いたずらっぽく光る黒い瞳に、答える代わりに目を閉じる。
稀斗が小さく笑う気配がして、瑛莉菜の尖らせた唇に優しく自分のそれを重ねた。
強くて優しい腕で胸の中に囲われて、ぎゅっと抱きしめられれば、瑛莉菜にはもうなす術がない。
稀斗のくれるキスは悪い魔法を解く鍵で、だけど厄介な魔法をかけるキスだ。
瑛莉菜をうんと夢中にさせ、うっとりさせて、他には何も見えなくする。
他の誰にもできない、稀斗だけの特別な魔法。
「よし! 次はこれでいこう!」
パソコンに向かっていた弥生が顔を上げる気配がしたので、名残惜しく唇を離す。
「続きは後でな」
稀斗に耳元で囁かれて、瑛莉菜は甘い目眩に身を委ねた。
今夜のデートは、うんと長くなりそうだ。
-完-