王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
「ああ、もう! ほんとにかわいいな」
人目のあるところで突然ぎゅうぎゅうと抱きしめられて、ウェンディの頬は一気に熱を上げる。
「あ、あのっ、ウィルフレッドさま……」
慌ててもぞもぞと身じろぎし、自分を囲う男を見上げると、優しい琥珀色の視線が愛おしそうに熱を燻らせてウェンディに注がれていた。
きゅんと胸が高鳴り、同時に息が苦しくなるほどドキドキする。
「あのね、俺だって、今更きみを離したりできないよ。他の男になんて、絶対にやりたくない」
そしてウィルフレッドは背の高い腰を折り、コツンとおでこを合わせると、いたずらっぽく微笑んだ。
「お義父さんに殴られただけでウェンディを俺のものにできるなら、俺は喜んで殴られちゃうな」
* * *
「ああ、くそ。ほんとかわいいな」
「きゃあ!」
ソファの上で丸くなって膝を抱え、読書に熱中していた瑛莉菜は、突然後ろから絡まってきた腕に驚いて振り返った。
「き、稀斗! おかえりなさい」
合鍵をもらっている稀斗の部屋で彼が帰って来るのを待っていたのだが、本に夢中になりすぎて、帰って来たことに気がつかなかった。