王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
コールリッジ家とランス家の結婚など、国としてはほとんど禁忌に近い。
そしてなにより、王家がいちばん認めたくない結婚のはずである。
国王は混乱に揺れるウィルフレッドの琥珀色を見返し、ゆっくりと頷いた。
「なるべくはやく……いや、1週間以内に、コールリッジ家との婚姻関係が欲しいのだ。受けてはくれぬか?」
「もちろん、叔父上の頼みなら結婚はお受け致しますが……」
ウィルフレッドが結婚を命じられたコールリッジ伯爵家の令嬢、ウェンディ・コールリッジは18歳になる少女だが、ウィルフレッドはあまりその姿を見たことがない。
社交界にはなかなか顔を出さないし、珍しく出てきたとしても人目を避けるようにすぐに帰ってしまうのだ。
18歳といえば充分に結婚適齢期であるし、ウェンディには兄がいるから、当然どこかへ嫁がなければ家の財産の問題上不都合であるはず。
しかし彼女はいくら言い寄っても振り向いてはくれない幻の美少女として有名でもあり、それを妬んだ女やフラれた男たちの中には彼女を悪く言う者もいる。
そのことがさらに彼女を社交界から遠ざけているのではないかと、ウィルフレッドは思うのだ。
しかし今ウィルフレッドを困惑させるのは、そんなことではなかった。