王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
「なぜ、コールリッジ家と?」
ウィルフレッドが怪訝な顔をして問いかけると、ギデオンは灰色の瞳を閉じ、小さく息をついて椅子の背に深く背中を預けた。
膝の上で両手を組み合わせ、静かに目を開く。
「神託が出たのだ。1週間以内に"禁断の青い果実"を完成させなければ、王子の命はない」
「なっ……!? それは、王子が"選ばれし統べる者"だということですか?」
驚愕に目を見開くウィルフレッドに、国王はもう一度目を閉じることで答えた。
ウィルフレッドは自分よりひとつ年下の王子の姿を思い出し、彼に降りかかった恐るべき神託にショックを受けた。
「その、神託の内容は……?」
自分でもわかるほど、声が震えている。
「『1週間以内に王子が禁断の青い果実を食べなければ、王子は命を落とし、楽園は枯れ果てる』と出た。そうなれば王家の歴史は途絶え、この国は再び混乱の渦に引きずり込まれる」
ギデオンは落ち着いたしっかりとした声で告げてから灰色の瞳を開き、まっすぐにウィルフレッドを見つめた。
「お前の協力が必要なのだ、ウィルフレッド」
その眼差しはかつて、このソファで王子とふたり肩を並べるウィルフレッドに、国の歴史を説く国王のものであった。