王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
その神託は、この国の長い歴史の中でいつも心待ちにされ、そして恐れられてきたものでもあった。
今でこそ周りを山々に囲われ、豊穣な土地をもち決して枯れることのない平和な国として『神の楽園』と呼ばれるこの国だが、かつては争いの絶えない国であった。
争いの元は、古より王家に伝わる"禁断の青い果実"である。
その果実は『知恵の実』とされていて、これを食べた者は過去も現在も未来も、この世の全てを知る力を得ると言われる。
しかしこれを食べるのは"選ばれし統べる者"でなくてはならず、それ以外の者が食べればたちまちその大きすぎる力に押し潰されて死に至るのだ。
この禁断の青い果実を手にする者こそが王と認められてきたのだが、その誘惑に耐えきれず、果実を食べてしまう者は少なくはなかった。
しかしこれまで"選ばれし統べる者"は現れず、果実を口にしたものは皆命を落とし、"禁断の青い果実"を巡って王が入れ替わり、そしてそれを食べてしまうことでまた王が入れ替わることの繰り返しだった。
そうして国の内政は乱れ、宮廷内でも城の外でも、争いが絶えなくなってしまったのである。
ゆえに"禁断の青い果実"はそれだけで争いの元であり、禁忌なのだ。
幼い頃からよく知る王子がその巨大過ぎる力に飲み込まれて行くことに、ウィルフレッドは込み上げる嘆きの声を抑えきれなかった。