王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
♡2日目

・王宮仮面舞踏会






ウェンディ・コールリッジは舞踏会へと向かう馬車の中で、窓に映る王都の街並みをぼんやりと見つめていた。


ウェンディは今年で18歳になる。

300年の歴史をたどれば王家の血筋であるコールリッジ伯爵家の令嬢で、兄がひとりいて、結婚適齢期。


本来なら積極的に社交界へ顔を出し結婚相手を探すのが自分の役割とわかっているのだが、彼女はいまいち社交界という場所を好きになれなかった。


ウェンディは器量よしで、社交界にデビューした当初はかなりの話題をさらったものだ。

波打つ豊かなはちみつ色の髪と翡翠色の大きな瞳をもち、透き通る白い柔肌と小さくつんと尖った鼻、それから朱く薄い唇は、華奢で小柄な彼女をより一層可愛らしく見せる。


飾っておきたくなる人形のような容姿と、コールリッジ伯爵家の令嬢という身分があれば、彼女に様々な思惑を持つ男が近づいてくるのは当然のことだった。

ウェンディはそのふんわりとした見た目からは想像がつかないほど聡明で賢い少女であったから、自分を駆け引きの道具としか見ない者たちの集う社交界を苦手と思うのも、また当然のことである。


彼女を彼女として見て、理解してくれるのは、頑固な父親と優しい母と数人の侍女、それから目の前に座る兄のエドガーくらいだ。
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