王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
男は青い目をしていた。
青とはいっても、エリナのように透き通る空色ではない。
灰色がかった深い青紫色をしていて、底のない海のような虹彩に真っ黒い瞳が浮かんでいる。
(すごい、綺麗……)
エリナはその切れ長の瞳に息を飲み、ため息をつきたいのを必死に堪えた。
まっすぐな鼻梁と薄く形のいい唇を高い頬骨が際立て、人を寄せ付けないほどに整った冷たい印象すら与えるのに、不思議な深い瞳の色と珍しい黒髪が見る者を魅了せずにはいられないのだ。
髪も服も黒で揃えた彼は、すっきりとした顔立ちに甘やかな雰囲気と強烈な吸引力が加わり、ひどく魅力的に見える。
男が深い青紫色の瞳を嬉しそうに細めると、その精悍な顔つきからは想像もつかないほど屈託のない笑顔になった。
「やっと会えたな」
「え?」
ぽかーんと見上げていたエリナは突然笑顔を向けられてぱちぱちと目を瞬いたが、男は満足そうに彼女を見つめてから、腕を離すことなくランバートへと視線を移した。
鋭く細められた瞳からは、すっと甘やかさが逃げていく。