王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
ランバートの堀の深い目元の奥で、二重のヘーゼルの瞳がからかうように妖しく光る。
その表情は、瑛莉菜の初恋の相手に驚くほど似ている。
優しく妖しく、軽薄を装っているようで本当は何を考えているのかわからない。
「まあ、今夜はひとまず退散と致しましょう。味見は今夜でなくともできる」
「俺がさせない」
王子は背中からひょっこり顔を出そうとするエリナを、ランバートの視線に晒したくもないと言わんばかりに、自分の後ろへと追いやりながら反論する。
「ランス公爵にお前が私の邸へ来れるよう招待状を送ろう。来るか来ないかはお前の自由だ」
ランバートは唇の端を歪めて笑みをつくり、ふたりに背を向けた。
エリナは、もう二度とこんな男に気持ちを踏みにじられるのは嫌だった。
ランバートは忘れられない初恋の相手に気味が悪いほど雰囲気が似ていて、彼女のトラウマとも言うべき存在である。
関わりたくないのが本音だが、今のエリナには王子の背中でただ守られているわけにはいかない理由があった。