王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
「それにしても、伯爵に絡まれているのがエリーだってよくわかったな。俺、そんなにエリーの話ばっかりしてる?」
「……してるだろ。それより、そっちはどうだったわけ?」
ウィルフレッドの疑問は最もで、彼は不思議そうに首を傾げていたが、キットはあまり昨夜のことについて話をする気はないのか、すぐに話題を逸らしてしまった。
しかしこっちはこっちで、かなり重要な話である。
「まあ、ウィルのことだから心配はいらないと思うけど、相手はひとまわり年下だろ?」
「でも、なかなか賢いご令嬢だったよ。そして可愛らしくていい子だった」
「ふーん」
ウィルフレッドとキットは従兄弟同士で、歳もひとつしか違わない。
公爵と王子という立場だが、実年齢はウィルフレッドの方が上ということもあって、ふたりにはこれがちょうどいい距離感なのだろう。
エリナは慣れ親しんだふたりの空気を壊す気にもならず、黙って交わされる会話を聞いていた。
ウィルフレッドの話によれば、ウェンディは思った以上に聡明な女の子で、話の通じる相手だと判断して、なんと神託のことをさっさと話してしまったらしい。
「もちろん、それが理由で近付いたとは言ってないし、ちゃんと偶然を装ってるよ。でもこっちには時間がないし、やましい秘密がひとつあるわけだから、話せることは話そうと思って」