王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
ウィルフレッドはなんてことないように言うが、実際かなりの賭けに出ているのではないだろうか。
エリナは驚きと不安の表情を浮かべ、ケロッとした顔で隣に座る主を見つめた。
「それで、彼女の反応はどうだったんだ?」
キットはさしたる驚きも見せず、少し考え込むような仕草をしてから、片方の眉を器用に持ち上げる。
ウィルフレッドがそれに同じ仕草で返すと、琥珀色の瞳が金色の光を帯び、口元に不敵な笑みが広がった。
「協力して欲しいと言ったら、兄と相談すると答えた。手応えはある」
「ふーん、相変わらず要領の良いやつだな」
キットはその手際のよさに半ば呆れたような顔をして、視線をふいっと窓の外へ逃がした。
(ウィルの人付き合いの器用さはむしろ考えものだな)
ウィルフレッドは女たらしと言うより、天然の人たらしだ。
相手の気持ちや望むことを敏感に感じ取ってしまうのは、幸か不幸か、どちらにせよ天性のものとしか言いようがない。
それだから、本当の意味で彼が心を砕く相手などほとんどいないのだ。
ふたりのやり取りを黙って見守っていたエリナは、ウィルフレッドの答えを聞いてほっとしたように息を吐いた。