王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
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エリナは馬車に揺られながら、ぼんやりと記憶の波間を漂っていた。
昨夜ランバートと出会ったことで押し寄せてきた波が彼女を捕まえ、周りの音が聞こえなくなるくらい、深いところまで連れ去って行く。
ランバートは、瑛莉菜の初恋の相手と同じ顔をしていた。
弥生に渡した写真に写る彼は、瑛莉菜の通っていた大学のサークルの先輩だった。
あの頃、彼と顔を合わせるたび、さり気ない優しさを向けられるたびにゆっくりと惹かれていくのが自分でもわかった。
明るくて、人気者で、ときどき調子に乗るところはあったけど、そんな彼のやんちゃな一面を見ているのは楽しかったのだ。
"キスは、本当に好きな人とするもの。"
心からそう信じて疑わなかった瑛莉菜は、中学生の頃も高校生の頃も、まわりの友だちが次々と恋人をつくっていくのを見ながらも、本当に好きになれる相手を探し続けていた。
そして、先輩に出会ったとき、やっと見つけたと思ったのだ。
あれが初恋だったと思う。