王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
それからしばらくして、サークルは辞めてしまった。
先輩とは、彼が卒業するまで、そして今に至るまで、目を合わせることもできていない。
瑛莉菜にはもう"本当の恋"にこだわる理由も見つからなかったし、そもそも"人を好きになる"というのがどういうことなのか、イマイチわからなくなってしまった。
その出来事の後、何人かの男の人と「今度こそ」と思って付き合ってみるものの、全部長続きしないのだ。
瑛莉菜には人を好きになるということがわからないのだし、誰かに大事にされる感覚もわからないのだから、当然のことではあった。
いつしか互いに大切に想い合って恋い焦がれるような、"本当の恋"を探すことなど諦めてしまっていたし、そんな瑛莉菜が本気で恋をできないのは当たり前だった。
(恋愛恐怖症、か……)
それは瑛莉菜の初恋のエピソードを聞き出した弥生が、彼女に言った言葉だ。
瑛莉菜にはまったくそんなつもりはなかったのだが、弥生に言わせれば、瑛莉菜は誰かを本気で想うことを怖がっているから恋愛ができないのだ。
(やよい先生、どうしてヴェッカーズ伯爵と先輩を同じ顔にしたんだろう)
弥生の言う、この世界を抜け出す鍵でもある"真実の愛のキス"は、ランバートに関係することなのだろうか。
エリナの頭の中は、初恋の記憶と弥生の思惑とがごちゃごちゃになり、どんどん深く思考の波に取り込まれていった。