平行なまま。



いつだって頭の中は彼でいっぱいだった

ただただ好きで

一緒に居たくて、温もりを感じたくて


・・でもそれは所詮

私の一方的な感情でしかなかった


「…陽菜、いい加減それ止めろよ」


呆れた様に溜め息を吐く彼が言う、¨それ¨とは
今まさに彼の腰に抱き付いている私の行動を指していた

時は昼休み
場所は生徒が行き交う廊下

人気の多いこの場所では、あまりに目立ちすぎた言動だ

それでもめげる事もなく、彼の体に頬を擦り寄せた私は満面の笑みで彼を見上げた


「だって好きなんだもん」



私の名前は一瀬 陽菜(いちのせ ひな)

16歳の高校2年生

明日やってくる誕生日に心を踊らせている

何故なら、目の前の彼に祝って貰う予定だから


「ねえねえ、いっちゃん!」

「いっちゃん言うな」

「誕生日なにしてくれるのー?」

「内緒」

「えー、ケチ!」


いっちゃんこと、原 壱哉(はら いちや)

小中高とずっと同じ時間を過ごしてきた幼馴染みで、そして私の初恋の人

初めて出会った10年前と変わらない優しさが大好きで大好きで

ほら今も、口を尖らせて不満そうな顔をした私の頭を撫でて微笑んでくれる


この想いが変わる事なんてきっと有り得ない


それでも分かっていた

ちゃんと気付いていたんだ


いっちゃんが私を¨そう言う対象¨として見てないって事



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