平行なまま。



退屈な授業を終え、放課後

日課となったいっちゃんの教室へのお迎えは沈んだ心を明るく照らしてくれる

早く、早く…

いっちゃんに会いたい

大好きないっちゃんの笑顔が見たい


自然と小走りとなる私とすれ違う他クラスの人の舌打ちも聞こえない

例え世界中の人間に嫌らわれても、いっちゃんがいる限り私は生きていける


辿り着いたいっちゃんのクラスに顔を覗かせると、いつもなら準備をして待っている筈の彼がどこにも見当たらない

チラホラと人気が減っていく教室を見渡す中、黒板に落書きをしている3人の男達の1人と目が合った


本城 龍

…いっちゃんの高校からの友達だ


「お、陽菜ちゃん
壱哉のお迎え?
でも残念!アイツ今日は用事あるって先に教室出てったよ」

「…そうですか」

「えぇ~!なんで敬語!?」


いっちゃんが何の連絡もなしに先に帰っちゃうなんて

…なんだか妙な胸騒ぎがする


落ち込み気味に教室を後にする私の背中に、本城君の声がかかった気がしたけどその時は振り返らなかった

それは私が彼に対して苦手意識があるから

いっちゃんと並んで歩く彼が鬱陶しくもあったし、何より私に向ける笑顔が怖かった

あの笑顔はいっちゃんとは違う、独特な物

他の人からしたら気さくで良い人なんだろうけど


「…嫌な感じ」



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