厄介なkissを、きみと
「あ、おいっ…。待て、って」
そう呼び止められ、再び足を止める。
翔平の相手をしている時間なんてない。
32分発のバスに乗れなかったら、遅刻しちゃう。
「乗り遅れると困るん……」
「送ってくよ」
「………え?」
バタン、とドアの閉まる音がして、エンジン音が響いたかと思ったら、車がゆっくりと動き出した。
「えっ?……えぇっ!?」
突然の状況に、ただただうろたえるだけの私。
駐車スペースから出た黒い車がスーッと私の横につくと、助手席側の窓がゆっくりと下がる。
「乗せていってやるよ。駅まで」
運転席から私を見上げる翔平が、そう言ったのだ。