降り注ぐのは、君への手紙
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ぼんやりと見えるのは白い天井。
最初は真っ白で、徐々に継ぎ目の黒が見えてくる。
と同時に、点滴の機械の音や、扉の外を慌ただしく歩く足音が聞こえてきた。
ここはどこだ?
口に出そうとして言葉にならない。
唇が乾いていて、上手く動かないのだ。
ゆっくりと視界を巡らせて、ここが病院であることをようやく理解する。
でも、病院ってなんで?
俺は健康優良児だけれどもな。
記憶が曖昧だった。
思い出そうとしても頭に広がるのは空白で、取っ掛かりが掴めない。
仕方なく、ただ周りを見続けていた。
ふと、点滴の液が少なくなっていることに気づく。
ではやがて看護師が取り替えに来るのだろう。
それまでのんびり待てばいいか。
待ち時間はそう長くなかった。
「日向さん、点滴取り替えますねー」
なれた様子の看護師が、独り言を呟くようにいって、俺の腕を取る。
俺はゆっくりと首を動かした。
すると看護師は手を止め、俺の顔を凝視する。
「……日向、さん?」
「は……い」
あ、声がかすれる。
音にならなかった気もしたが、看護師は目をしばたたかせた。
「え? ホント? 気が付かれたんですか!」
「えっと、おはよ……ござい、ます?」
あまりにも興奮する看護師に若干ビビりつつ、俺は必死に言葉を紡いだ。
しかし、看護師は俺の話など聞いちゃいねぇ。
「大変、先生! 先生!!」
駆け出していく看護婦に、「おい、ちょっと、点滴は」と叫ぶ。
もちろん、カラカラの俺の喉からは掠れたような声しか出ず、それは誰の耳にも届かなかっただろう。