降り注ぐのは、君への手紙
その後、成美はすっかり変わってしまった。
髪型をひっつめおさげにかえ、似合わないメガネをかける。存在感を消すように、いつもうつむいていた。
自らその美貌を封じ込め足早に通り過ぎて行く成美に、苛立ちに似た何かが胸の奥に湧き上がったけれど、俺はそれに名前をつけることも出来ないまま、ただずっと彼女を眺めるだけにとどめていた。
俺にまで怯えたような目を向けられたらと思うと、無性に気分が悪かったからだ。
それから一年ほどした頃、成美が珍しく俺を呼び止めた。
「武俊くん」
「あ?」
驚きのあまり、変な声が出た。
いつもすれ違っても何も言ってこないくせに、どうしたんだ今日はって思ったら、心臓までも早鐘を打つ。
成美は頬を染め、目を伏せて俺の前に立ち、ためらいがちに口を開いた。
「あのね。あの、……おじさまって、今何処の学校に勤めていらっしゃるの?」
「は? 雪柳高校だけど」
通学圏内であるけれどここからは少し距離がある、学力は中堅レベルの学校だ。
成美みたいな成績優秀者が目指すような学校ではない。
まあ俺はもっと近くの低レベル高校に通っているので、真逆の意味で狙えない高校だったのだが。
「そう。ありがとう」
成美は俺が今まで見たことなかったような笑顔になって頭を下げると、立ち去ろうとした。
おい、待てよ。
それだけかよ。
それだけのことで、なんて幸せそうな顔しやがるんだよ。