降り注ぐのは、君への手紙

沸き上がった苛立ちは、まるで爆弾みたいだった。
弾けて煙が沸き上がったみたいに、何もかもが見えなくなる。善悪だって知るもんか。

俺は。

俺はただ。

気が付いたら、きっちり結われた彼女のお下げ髪を引っ張っていた。


「いたっ」


まるでしめ縄みたいに結われている。あんなに綺麗なサラサラの髪なのに、なんでこんな風に隠すんだよ。

伝えたい気持ちはたくさんあるのに、上手く言葉にならない。ただ、イライラする。彼女にも、俺自身にも。

彼女は俺が睨んだように見えたのだろう。飛び上がって、怯えた目で俺を見る。


「な、なに?」

「そんなこと聞いてどうする気?」

「聞いてみただけ。ほら、そろそろ志望校を決めなきゃいけないから」

「あんな学校いくの? お前もっと賢いだろ」

「でも。おじさまのいる学校に行きたいの」


完全にビビっているのに、彼女は必死に俺に意志を伝えてくる。

お前、男が怖いんじゃなかったのかよ。
普段はシカトしてるくせに、親父の話だから?

だいたい、そのメガネも邪魔だよ。
それじゃちゃんと顔が見えない。


「でもさ」

「いいの。決めたの。私おじさまの学校に行く。武俊くん教えてくれてありがとう」


成美は話をまとめてそう言った。
目の前でこれ以上入ってくるなと線を引かれたようで、堪らなくイライラする。


……親父なんて、既婚者だぞ?
成美が一途に想うような相手じゃねぇだろう。


彼女の気持ちが、父親というものに対する憧れなのだとしても、それでも許容出来ないほど苛ついた。


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