降り注ぐのは、君への手紙

「すみませんでしたね。妃香里さんには辛いことなのに」

「……いいえ、案外大丈夫みたいです」

前は一緒に死んでほしいと思うくらい武俊くんに執着してたのに、今は平気だ。
彼の為にこんなことが出来るなんて、意外。
……でも、私は彼の為にしたわけじゃないかもしれない。

私の横には、私を労るような眼差しで見つめるヨミさんがいる。
ヨミさんの為だって思えたから、出来たのかもしれない。


「武俊くんがいないと、なんか広く感じますね。ここ」

「そうですね。態度の大きな人でしたし」

「それに、ヨミさんが前より元気が無いです」

沢山の人を救ってきたヨミさん。
あなたは?
あなたは誰かに救われたいと思うときはないの?

言葉遊びのようなやりとりをしながら、本心を聞き出そうと躍起になるもヨミさんはなかなかにポーカーフェイスだ。

「私、珈琲入れる練習しようかなぁ」

それに、彼は食いついた。
眼鏡で見えにくいけど、ヨミさんの目に、欲しい物を見つけた時の子供のような光が宿る。

「では、ここで働きませんか? 閻魔様には僕からちゃんとお願いしますから」

「はい。ぜひ、お願いします」

彼が甘えた声を出すことに満足しながら、私は頷いた。

< 158 / 167 >

この作品をシェア

pagetop