降り注ぐのは、君への手紙
「すみませんでしたね。妃香里さんには辛いことなのに」
「……いいえ、案外大丈夫みたいです」
前は一緒に死んでほしいと思うくらい武俊くんに執着してたのに、今は平気だ。
彼の為にこんなことが出来るなんて、意外。
……でも、私は彼の為にしたわけじゃないかもしれない。
私の横には、私を労るような眼差しで見つめるヨミさんがいる。
ヨミさんの為だって思えたから、出来たのかもしれない。
「武俊くんがいないと、なんか広く感じますね。ここ」
「そうですね。態度の大きな人でしたし」
「それに、ヨミさんが前より元気が無いです」
沢山の人を救ってきたヨミさん。
あなたは?
あなたは誰かに救われたいと思うときはないの?
言葉遊びのようなやりとりをしながら、本心を聞き出そうと躍起になるもヨミさんはなかなかにポーカーフェイスだ。
「私、珈琲入れる練習しようかなぁ」
それに、彼は食いついた。
眼鏡で見えにくいけど、ヨミさんの目に、欲しい物を見つけた時の子供のような光が宿る。
「では、ここで働きませんか? 閻魔様には僕からちゃんとお願いしますから」
「はい。ぜひ、お願いします」
彼が甘えた声を出すことに満足しながら、私は頷いた。