降り注ぐのは、君への手紙
「あんなジジイのどこがいいんだよっ」
怯えていたはずの成美が、顔を上げた。
俺は彼女の肩越しに壁に手をつく。いわゆる壁ドン状態だ。
成美の体が震えだしたのがわかった。呼吸が速く浅くなり、顔色がどんどん青ざめていく。
拒否反応、恐怖反応。
ダメだってバカ、止めろよ俺。
頭の片隅で止める自分がいたのに、感情の方が先に立った。
ただもう、バカみたいに悔しくて、情けない。
親父なんてもう五十五だぞ?
おっさんもおっさん。
そりゃちょっと渋い顔してるかもしれないけどさ、成美が騒ぐようなもんじゃねぇだろ。
俺の方がよっぽど……。
成美は震えながらも、必死に反論する。歯がカチカチとなっている位怖いくせに、俺を押しのけるように手を伸ばした。
「おじさまにそんな言い方しないで」
それは、ただでさえ興奮していた俺に油をさすようなものだった。
「お前おかしいだろ? なんでそんな親父の事かばうわけ。まるで親父が好きみたいじゃないか」
「みたいじゃなくてそうなの。おじさまが好きなの」
「馬鹿言うなよ。親父は俺の父親だぞ? ちゃんと母親だって生きてるんだからな!」
「分かってる。どうこうなりたいわけじゃないの。ただ好きなだけ!」