降り注ぐのは、君への手紙
*
それからまたいくつかの時が経って、私も見知ったお客様がやってきた。
「……え?」
「あ、マスター」
「妃香里……ちゃん?」
すっかり年老いてしまった『珈琲亭』のマスターは、以前とそれほど変わらない私を見て目を丸くし、自問自答するように首を振った。
「いや、そんなに若いわけない」
「そうでもないんですよ。ここは黄泉の国ですから。さあ、こちらにどうぞ」
落ち着いた声をだして、マスターを椅子に招くのはヨミさんだ。
「ここはヨミタケ郵便局です。あなたは現世で何か未練を残したのでは? もしよろしかったらそれをお手紙にしたためてください」
「は、はあ。でも妃香里ちゃんがなんで」
疑問が付きないマスターに、先ず私がここに来ることになった経緯を説明した。
「じゃあ、あの時タケはここにいたのか?」
「そうです。死にかけていた時、彼は生き返るためにここで必死に頑張っていたんです」
「じゃあ」
期待の眼差しをこめてヨミさんを見つめるも、彼は視線を伏せ顔を横に振った。
「あなたはもう無理なんです。体のほうが使い物になりませんから」
「は、……はは。だよな」
マスターは残念そうに笑うと、気持ちを入れ替えたかのように姿勢を正した。
「……アンタが、タケを助けてくれたんだな?」
ヨミさんは答えない。
ただ、じっとマスターを見つめ続けていた。
やがてヨミさんの目に驚きが宿る。マスターがヨミさんの目の前で便箋をくしゃくしゃに丸めたからだ。
それからまたいくつかの時が経って、私も見知ったお客様がやってきた。
「……え?」
「あ、マスター」
「妃香里……ちゃん?」
すっかり年老いてしまった『珈琲亭』のマスターは、以前とそれほど変わらない私を見て目を丸くし、自問自答するように首を振った。
「いや、そんなに若いわけない」
「そうでもないんですよ。ここは黄泉の国ですから。さあ、こちらにどうぞ」
落ち着いた声をだして、マスターを椅子に招くのはヨミさんだ。
「ここはヨミタケ郵便局です。あなたは現世で何か未練を残したのでは? もしよろしかったらそれをお手紙にしたためてください」
「は、はあ。でも妃香里ちゃんがなんで」
疑問が付きないマスターに、先ず私がここに来ることになった経緯を説明した。
「じゃあ、あの時タケはここにいたのか?」
「そうです。死にかけていた時、彼は生き返るためにここで必死に頑張っていたんです」
「じゃあ」
期待の眼差しをこめてヨミさんを見つめるも、彼は視線を伏せ顔を横に振った。
「あなたはもう無理なんです。体のほうが使い物になりませんから」
「は、……はは。だよな」
マスターは残念そうに笑うと、気持ちを入れ替えたかのように姿勢を正した。
「……アンタが、タケを助けてくれたんだな?」
ヨミさんは答えない。
ただ、じっとマスターを見つめ続けていた。
やがてヨミさんの目に驚きが宿る。マスターがヨミさんの目の前で便箋をくしゃくしゃに丸めたからだ。