降り注ぐのは、君への手紙
「お前に任せるよ」
病床で諦めたように言った武俊くんはもう店に立つことを諦めていたみたいだった。
そこから、彼は少しずつ身辺整理をし始める。
奥さんにあれこれ指示を出しながら、長男に譲るもの、次男に譲るものを分け、少しずつ貯めていた貯金を、「自分の生活のためだけに使うように」と奥さんに託した。
「……成美、孫達を頼むな」
「またそうやって私に押し付ける」
「だって、お前のほうが適任だろうよ」
最後まで言い合いをしながら、武俊くんは目を閉じた。
成美さんが、唇を噛み締めたまま頭を垂れる。
未練のない最期だっただろう。
あの停滞した九ヶ月を自分の力に変えて、彼は立派に生き抜いた。
ヨミタケ郵便局の鏡の前で、ヨミさんはゆっくりと手を合わせる。
「……おやすみなさい、タケさん」
ヨミさんは名残惜しそうに鏡を撫で、「さあ、仕事に戻りましょう」と告げた。
私は、出来る限りの明るい声をだした。
「コーヒー淹れますね、ヨミさん」
「はい。ありがとうございます」
気を緩めたら、お互い泣きだしてしまいそうだった。