降り注ぐのは、君への手紙
男はカウンターの向こう側で、中学の制服のような黒い襟詰めを着て、真面目くさった顔で座っていた。
年齢は俺と同じくらいだろうか。
いや、もう少し上かな。二十歳というには、風格がありすぎる。
「あの、ここって」
「郵便局ですよ。お手紙を出しに来られたのでは?」
言われてみて、ああそうだったかな、と思う。
「そうだ。手紙を出したい相手がいるんだけど。……便箋がないや。売ってる?」
俺は自分のポケットを探る。いつも履いてるジーンズにも、パーカーにも小銭一つ入っていなかった。もちろん鞄も持っていない。
「あー、ごめん。俺、無一文だった」
ボソリと呟くと、男は窓口の向かいの椅子を指し示した。
「この郵便局では、お金はいりません。その代わりお手紙をチェックさせていただくのです。さあどうぞ」
男は引き出しから紙と鉛筆を取り出し、カウンターに並べる。俺は素直にその紙が正面にくるように座った。
「チェックって、手紙見るってこと? それ、すげぇ恥ずかしんだけど」
「しかし規則なのです。でないときちんとお渡ししたい相手に届けられないので」
「なんでだよ、住所がわかれば届けられるだろ」
「あいにく、そんなに簡単ではないんです」
悠然と微笑む男に、まだまだ文句を言いたい気持ちではあったが、ただで送ってもらうんだから仕方ないかと諦めて、俺は鉛筆を握った。