降り注ぐのは、君への手紙
「じゃあきた道を戻ればいいんじゃねぇか」
「きた道覚えてます?」
「……それは覚えてないけど」
マジかー。
ここまで来て帰り方が分からないってどういうことだよ!
「思うように行ってみたらいかがですか? ただ、地獄とつながっている可能性もないことないですけど」
「それじゃ困るんだよ。俺はこいつのところに戻らなきゃ」
しかも他の男にかっさらわれる前に早く。
さっき書いた内容を書きなおしてぇ。
自分が戻れるなら他の男になんかやるかっつーの。
「……じゃあ聞いてみたらいかがです?」
「誰にだよ」
「時折お地蔵様が来られるんですよ。子供を優先的にお救いになる優しい方ですよ。あなたもまあ子供とも言えないこともないし」
「俺は二十歳だよ!」
「言動が子供っぽいからいけると思います」
何がだ。
つか、地蔵って。
あれって石像じゃないのかよ。
そんなもんがふらふら歩いてるものなのか?
「だから地蔵さまがいらっしゃるまで僕の手伝いをしませんか?」
「は?」
「一人だとゆっくり休憩している時間がとれなくて、手伝いがいたらいいなぁと思っていたんですよ」
嘘つけよ。
さっきも悠長に珈琲を飲んでいたじゃないか。