降り注ぐのは、君への手紙

「まあいい。じゃあ手伝いって何をすればいいんだ?」

「そうですね。美味しい珈琲を入れてくだされば」


男はにっこり笑ってコーヒーサーバーを指さす。
もしや、俺の珈琲を気に入ったな?


「ここにはあなたのように彷徨いながらも現世に未練を残した方が多く来られます。その方たちの未練を晴らすお手紙をお届けするのが僕の仕事です。結構ストレス溜まるんですよ。美味しい珈琲タイムがあったら仕事効率上がると思うんですよね。それにあなたにとっても徳を積むのは悪いことではないはずです。お地蔵様がいらした時の交渉材料になりますよ」


こんなところでもたもたしてる暇ねぇんだよ、とは思うけど。
闇雲に歩いて地獄に行っちゃうよりは確実な手段かもしれない。


「分かった。地蔵が来るまでな。帰れる方法が分かったら俺はすぐに帰る!」

「はいはい。では僕のことはヨミとお呼びください」

「ヨミ?」

「黄泉国のヨミです。あなたのことはなんとお呼びすれば?」

「ああ。俺は日向武俊。タケって呼んでくれればいい」

「では暫くの間、ここはヨミタケ郵便局ですね」


何だそりゃ。
名前まで変える必要はねぇだろう。


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