降り注ぐのは、君への手紙
この世界には朝晩の感覚が無いらしい。
俺がこのヨミタケ郵便局(読み方はいくら言っても改めてくれないので諦めた)に来てから、かれこれ二週間ほど経つと思うのだが、いわゆる夜だから眠いとかいう感覚がない。
うたた寝こそすれど、ゆっくり布団に入るということもなく日々を過ごしている。
まあ、布団自体ここには置いていないのだが。
ついでに言えば腹が減ったという感覚もない。
茶を入れれば飲むし、たまにヨミが持ってくる海苔巻きとかも食うけど、それでお腹いっぱいという感覚にはならない。
なんだか人生の楽しみを奪われたようでつまらないことこの上ない。
人間、寝て食うことに喜びを感じるのは大事なことだと思うんだが。
「だって死んでるんですから仕方ないでしょう」
悠々と微笑んで俺に相槌を打つのは、黒い短髪に黒縁眼鏡、学ラン風の制服を着た年齢不詳の郵便局員・ヨミだ。
「うわぁ、心の声を読むなよ」
「いやいや、タケさん思いっきり口に出していましたよ?」
そうだったか?
なにせ、ここにいると話せるのがヨミ位なもんで。
そのヨミも結構な割合で「出かけてきます」とか言っていなくなるもんだから、すっかり独り言が癖になってしまった。