降り注ぐのは、君への手紙


「まあいい。でも俺は死んでねぇんだろ? 体はまだ生きてるはずだ」

「そうですね。一応半死って状態ですよね。もう諦めて死んだらいかがですか」

「ざけんな。そもそもお地蔵様とやらが来ねぇからこんなトコでくすぶってんじゃねぇか」


そう。
自分が意識不明の重体状態だと知った俺の最終目標はなんとかして自分の体に戻ることだ。

ヨミに相談したところ、たまにやってくるお地蔵様に頼んでみろって言うからここで手伝いをしながら待っているのに、一向に来やしねぇ。


「お地蔵様も忙しいのですよ。大丈夫、あなたの善行はちゃんと記録されています」

「どこに」

「地獄のお役所ですよ。死んだら裁判を受けるんですよ? 知りません? 閻魔様とかは現世でも有名でしょう」

「うげぇ」


知らねぇけどよ。仏教のあれこれとかは。
でも別に死後のシステムとか知りたくねぇんだよ。俺が知りたいのは現世への帰り方のみ!


「というわけで、タケさんは真面目に働いてくれてればいいんです。あ、ちなみに悪行もちゃんと記録されますから。悪いことはしないほうがいいですよ。それよりお茶いれてくださいよ。今日は煎茶がいいです」

「へぇへぇ」


俺がこの郵便局で唯一マトモに出来る仕事。それがお茶汲みだ。

そう説明すると能なしのOLみたいで甚だ心外だが、地獄やら極楽やら現世やらとの境界が曖昧な場所にあるというこの特殊な郵便局の仕事は、特殊能力が必要なようで、ヨミは俺に他の仕事はやらせてくれない。

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