降り注ぐのは、君への手紙
「やりたいんですか?」
また心の声が口に出ていたらしい。平坦な声でヨミが問い返す。
「だってよ、お茶汲みならもう完璧だぜ。煎茶に番茶に紅茶に珈琲。お好みのものをお好みの熱さで入れてやれる。そろそろ他のこともやりてぇよ」
このヨミタケ郵便局には時折亡者がやってくる。
カフェさながら、亡者に飲みたいものをリクエストしてもらい、それを出すのが現在の俺の仕事だ。
亡者には当然のごとく老人が多いのだが、茶を出すとしみじみ語り出すこと数時間。
一人に対して三回は茶の入れなおしをする。
そりゃあ上達するってもんだろう。
そうして茶を飲みながら、亡者はヨミに未練を語り、その想いの丈を文字に綴る。
ヨミがそれを受け付けて、手紙の渡し先が現世ならば何らかの自然現象に形を変え配達する。
ちなみに、相手が極楽にいたり地獄にいたりする場合にはヨミが自ら届けに行くらしい。
時折いなくなるのはどうやらそのせいのようだ。
「でしたら次に来るお客様はタケさんがお相手してください」
「へ?」
予想外なことを言い出した。
身を乗り出すと、ヨミが相好を崩す。
「仕事を覚えてくれるなら助かります。私がここを留守にしている間、タケさんに任せる事が出来ますしね」
「おお?」
なんか。余計な責任まで覆い被された気がする。
もしかして俺は迂闊なことを言ってしまったのか?