降り注ぐのは、君への手紙
「なによ、もう。笑うのはやめて」
「いきなり河童とか言うからですよ。そんなナリしてまだまだ子供ですね」
私が着ているのは女学校の制服だ。
見た目で言えば、それほど子供には見えなかっただろうし、実際子供扱いもされない年齢だ。
実際、後一年して卒業すれば、その後はどこかに嫁にやられるはずだ。
今年卒業した姉も、ニヶ月ほど前に嫁ぎ先が決まって今は花嫁修業の真っ最中だ。
縫い物の手を止めて私を見て「あなたもいずれよ」と寂しそうに微笑まれたのが胸に残っている。
「子供じゃないわ。もう十四ですもの」
「年は関係ないんですよ。大人とか子供っていうのはね」
クスクス笑いながら、男は私に背中を向ける。
「とにかく危ないからお帰りになった方がいい。草が伸びすぎていて、川との境が分かりづらくなっている」
「あ、待って」
行ってしまう、と思って私は慌てて彼の服を掴もうとした。
けれど彼は上半身をむき出しにしているので、私の手は彼の肌に直に触れてしまう。
「あ、ごめんなさい」
家族以外の男の人に触るなんて初めてで。
その瞬間に顔が熱くなった。
「ほら、子供だ」
男は余裕の笑みを浮かべて、草をかき分ける。