降り注ぐのは、君への手紙
振り向いてみると、彼は昨日と同じような上半身裸の姿だ。
濡れたような艶がある……のは実際に濡れているわけではないのかも知れない。実際彼の手に抑えられた私の服は濡れてなどいないから。
「……どうしていつも上着を着ていないんですか?」
「あいにく、お嬢さんと違って裕福じゃないんでね。着替えがそんなに無い」
「毎日裸でいること無いでしょう」
「いいだろ。素っ裸ってわけじゃねぇし。畑仕事してりゃ汗をかく。汚れるの分かってて着る必要ねぇだろってもんだ」
もしかして、この人がここにいるのは、川で体を流すためなんだろうか。
ここなら草丈があって、人からは見られないし。
「誤解しないでください。私は覗きに来ているわけじゃありません」
「は?」
「河童を探しに来ているだけなの。だから、川で体を洗うのなら、この時間より先にしていただけないかしら」
佐助はまじまじと私を見ると、ついには吹き出した。
私は自然と不機嫌な顔になる。
「なぜ笑うんですか!」
「いや、だって。冗談で言ってるのかと思ったのに、本気だったのか」
「本気です」
「河童なんか見つけてどうするんだ? 見せ物にでもする気か?」
「そんな。……ただ知りたいだけです。そんな不思議な生物が本当にいるのかどうか」
草がチクチクと肌をさす。
それが不快で払うと、彼が辺りの草を踏みつけた。
ボキボキという音がして、長い草が力なく辺りに倒れる。