降り注ぐのは、君への手紙
「気にすることなどない」
佐助はそう言い、私の唇を塞いだ。熱が全身にしみわたるようだ。これが、今日を限りに最後になるというのなら惜しい。いや違う。一緒に行くのだから、きっと死後の世界でも同じように一緒にいられるはずだ。
強く抱きしめられ、体を預けるように体重をかけた私を、彼は両腕で抱き上げる。
「怖くない?」
「いいえ」
本当に怖くはなかった。
じっとりと何かを孕んでいるような黒の川面も、時折、笛のような音を鳴らす風も。
彼といるならば何も怖くなどない。
佐助は私を抱いたまま、一歩、また一歩を川に足を踏み入れる。
まだ私は水には浸かっていなかったけれど、足先の方からひんやりした空気が伝わってきた。
大丈夫。
佐助は私を守ってくれる。
このたくましい腕で、どこまでも一緒に連れて行ってくれる。
おしりの辺りに水があたった。
そこからは一気に、水の中へと引きずり入れられる。
ゴポッという音が最後だった気がする。
耳に水が侵入してきたのか、何かを考えるよりも先に苦しいという言葉が浮かぶ。
佐助は私を離さない。
しっかり抱きしめたまま、自らの顔も水の中へと入れた。
そのまま川の深いところまで、流れに逆らわずに進む。