降り注ぐのは、君への手紙
「お父様はもちろん反対しました。凛に監視をつけ、別の許嫁をあてがった。凛は泣きましたが私達に従いました。男は失意のあまり行方をくらましたと聞いています。まさか自殺していたとは……」
「その方が、……佐助?」
「幸、あなたは化かされたのですよ。その男の幽霊に。結婚する凛を恨みに思って、妹であるあなたを川に引きずり込んだのでしょう。……怖かったでしょう?」
「……ちが」
違う。
私は彼と恋をしたのだ。
この世で結ばれないならあの世でと約束して共に入水したのだ。
……だけど、私は間際で生を選んだ。
彼はそんな私の手を離した。
「あの方は、姉様が好きだったの?」
「今回のことはお忘れなさい。村の人間の口も封じてあります。あなたは何者かに拉致され川に投げ込まれた。犯人は見つかりませんでしたが、あなたが無事であったからそれでいい。そう……そういうことなのです」
釈然としない思いが胸をよぎった。
母の言うことが本当ならば、彼は……佐助は私に恋などしてはいなかったのか?
いやそもそも、生きてなどいなかったのだろうか。
触れた感触があったのに?
彼が幽霊であったことは、それほどショックでは無かった。
ただ、姉の代わりとして愛されたのかということが私を傷つけた。