降り注ぐのは、君への手紙
塞ぎこんだまま時が過ぎ、女学校を卒業した私にも、親の決めた許嫁があてがわれた。
歳は私の五つ上で、二つ隣の村の地主の長男だった。
あの出来事を知らない男を探すために、両親は出来る限りの遠くのツテを頼ったらしい。
祝言の夜、私は佐助のことを思い出していた。
彼を忘れることができるのか。
心中しても良いと思ったほどの恋情を、本当になくすことができるのか。
しかし、それは杞憂に終わった。
年上の夫は、優しく大人しい男だった。村に頼るもののいない私をことのほか大切にし、村人との間も積極的に取り持ってくれた。
穏やかな愛情は、私を癒してくれた。
最初は義務と思っていた結婚を、心から喜ぶようになるまでにそう時間はかからなかった。
私は、彼は河童だったのだと思うことにした。
河童との不思議な出会いをしたのだと。
記憶の底に封印して、これからは夫との生活に全てを注ぎ込もうと。