降り注ぐのは、君への手紙
ヨミタケ郵便局に来てかれこれ一ヶ月ほど経つ……と思う。
言い方が曖昧なのはいまいち日の経つ感覚がないからだ。
あまりにも感覚が曖昧なので、最近は手製のカレンダーでチェックしている。
「ああー来ねぇ、地蔵はなにをしてんだよ」
「さあ。人の世を視察に行っているかも知れませんね」
「なんじゃそら。そんな暇あるならここに来いよ」
「お地蔵様は忙しいんです。さて。僕も忙しんで、ちょっと外出しますね。もしお客様がいらっしゃったらお話聞いてあげてください」
「へいへい」
あのばーさんの一件以後、ヨミは俺に留守を任せるようになった。
以前は留守にしている間は入り口に不在の札をおろしていたようだが、最近はそういうこともない。
今のところ、癖のない亡者たちがやってきて、茶を出しながら話を聞いて、手紙を書かせると満足して帰っていく。
ヨミがいないと手紙は出せないので、「後で出しときます」と説明することになるのだが、これまで文句を言う奴はいなかった。
「暇なら報告書の整理と便箋づくりをしていてください」
「へーへー、わかったよ」
「働き者は大好きですよ」
詰め襟の男はにっこり笑うと、これまた学生帽のようなものをかぶって外へ出て行った。
こんなに不在になるのなら、最初っからここの人員を二人にしておきゃ良かったんじゃないのか、などと思ってしまう。