降り注ぐのは、君への手紙


「思います。子どもたちが皆ひまわりみたいに育ってくれたら、この日本は必ず立派な国になります」


彼女は驚いたように僕を見つめ、フッと笑う。


「気が合うな。……どこかであったことはないかな。見たことがあるような気がするんだが」

「あ……」


あります。
それを言えなかったのは、周りの作業員たちが一様に冷やかし始めたからだ。


「お前、先生に何してんだよ」

「そうだぞ、旦那さんに叱られちまうぜ、先生」


彼女は冷やかしなど静かに受け流して笑う。


「叱ってくれるような相手がいればいいのだがな。働く女は嫌われる。学がある女もな」


常に凛としていた彼女が一瞬寂しげな表情を見せる。
それと同時に、まだ彼女は結婚していないのか、と一人よがりな希望を抱いた。

いつまでも花壇を見つめ続ける彼女に、僕は居ても立ってもいられなくなり駆け寄った。


「植えませんか、ひまわり」

「え?」

「休みの日で良ければ、僕、手伝います」


彼女は驚いたように僕を見つめ、フッと目尻を細めた。


「では日曜に」

「は、はいっ」


彼女は冗談だと思ったかもしれない。
特に時間などは指定せず、皆が飲み終わった茶碗を集めて戻っていく。

< 73 / 167 >

この作品をシェア

pagetop