降り注ぐのは、君への手紙
「思います。子どもたちが皆ひまわりみたいに育ってくれたら、この日本は必ず立派な国になります」
彼女は驚いたように僕を見つめ、フッと笑う。
「気が合うな。……どこかであったことはないかな。見たことがあるような気がするんだが」
「あ……」
あります。
それを言えなかったのは、周りの作業員たちが一様に冷やかし始めたからだ。
「お前、先生に何してんだよ」
「そうだぞ、旦那さんに叱られちまうぜ、先生」
彼女は冷やかしなど静かに受け流して笑う。
「叱ってくれるような相手がいればいいのだがな。働く女は嫌われる。学がある女もな」
常に凛としていた彼女が一瞬寂しげな表情を見せる。
それと同時に、まだ彼女は結婚していないのか、と一人よがりな希望を抱いた。
いつまでも花壇を見つめ続ける彼女に、僕は居ても立ってもいられなくなり駆け寄った。
「植えませんか、ひまわり」
「え?」
「休みの日で良ければ、僕、手伝います」
彼女は驚いたように僕を見つめ、フッと目尻を細めた。
「では日曜に」
「は、はいっ」
彼女は冗談だと思ったかもしれない。
特に時間などは指定せず、皆が飲み終わった茶碗を集めて戻っていく。