降り注ぐのは、君への手紙
「惣一郎(そういちろう)、まさか先生に惚れたのか?」
僕に目をかけてくれていた先輩が冷やかすようにど突く。
「そ、そんなんじゃありませんよ。ただ、素敵な思想ですから憧れているだけです。……僕なんかがあの人の相手になれるとは思えません」
「だよなぁ」
そんな風に笑って流されるほど、僕は子供で彼女は大人だった。
恋ではない、と僕は自分に言い聞かせた。
恋になっても振り向いて貰えるはずなどないのだから。
ただ、花壇の話がとてもいいと思ったから、お手伝いをしたいだけなんだ。
その後、お茶を持ってくるのはいつもの事務員さんに戻ってしまい、彼女と話をする機会はなかった。
僕は日曜の約束を期待していたが、先輩たちは、あんな一瞬の口約束を覚えているわけがないと笑った。
そうかもしれない。
僕だって忙しい。
休みの日は家のことを手伝わなければ母が大変だ。
それでも、会いたい。
僕は母に手伝いができないことを詫び、藁にもすがるような思いで日曜の学校に行った。
期待より不安のほうが大きかった。
彼女がいなかったとして、何時まで待とう。
昼まで?
夜まで?
本当に来ないのなら、無駄な時間だ。
でも待ちたい。
可能性があるのなら。