混沌の闇
鳴り響かない夜の闇。

歪んだ音

重苦しい扉が開かれる。軋みながらゆっくり、それでも確実に。

「クウヤ、外に出られるみたいだよ…」
「…そうか」
「うん」

髪を長く伸して緩く括っている少年と、額から左頬にかけて縦長の刀傷がある青年が、開けられた扉から一歩外に踏み出す。
明るい光に目を細めながら、眩しそうに周囲を見上げる。

「呼ばれた、んだよね。あいつ、いや、『アレ』から」
「ユウキ、まだだ。まだその時期じゃない」
「大丈夫だよ。クウヤ」

静かな、だけど何処か薄らとした雰囲気の中で、ユウキは微笑を浮かべていた。

「あらあら。呑気にお喋りする余裕があって?」

淡い栗色に彩られた髪の女が、2人の前に立ちはだかった。
女は一歩ずつ歩み寄り、ユウキとクウヤとの幅は、女が近寄る度に狭くなる。

「君がユウキ君で、君がクウヤ君」

馴々しそうに、女の手がユウキへ伸ばされた。しかし、その手がユウキに触れることは無い。
殺気と敵意を纏わせたクウヤが、女の手を払ったからだ。
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