「今」という時間
数時間後。私は体がだるいのを我慢して、家とは反対方面行きの電車に乗っていた。

もちろん、倒れてしまったことは家に連絡が入っているだろう。
だとすると…。
私が1教科分のテストをムダにしたことも。
それじゃ当然、1位になんてなれるはずない。

こんな状況で家に帰るなんて自殺行為、出来るわけない。
今帰ったりしたら…

考えるだけでも寒気がする。

「私、何してんだろ....」

そう、ポツリとつぶやかれた私の声は、真冬の夜空に寂しく消えていった。
こんなことしたって…
余計に怖い目に遭うかもしれないじゃん…。

ははっ。私、ほんとにバカだな。笑

今自分がしてる小さな抵抗も、全く意味がないんだって思ったら笑えてきた。

「帰ろ…」

私はたまたま電車が止まった駅で、家の方へ行く電車に乗り換えて帰宅した。
でも、いざドアの前に立つとどうしても躊躇ってしまって....
ドアを開けることが出来ずに10分が経っていた。

「どうせ、運命は変えられないんだから。ここで逃げたって無駄だ。」

そう自分に言い聞かせ、そっとドアを開けた。

「た、ただいま....」

お父さんもお母さんもリビングかな....?
よかった....

そう思って自分の部屋がある2階へ行こうとした時。

「真央、帰ったの?」

お母さんだ....っ
心臓がドクドクいってる....

「う、うん。帰った。」

「学校から連絡あったわよ。遅かったじゃない。少しこっちへ来なさい。」

お母さんの低くて重い声が響く。
私は覚悟を決めて、黙ってリビングに行った。




< 8 / 8 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop