神様修行はじめます! 其の四
・・・・・・お岩さん・・・。
固く握りしめられた彼女の両のコブシが、ふるふると小刻みに震えている。
地面に伏した頭から、すすり泣く音が聞こえた。
その声のあまりの哀しさに、あたしの鼻先もジンと痛む。
心配顔のしま子がお岩さんを抱き起そうとするのを、あたしは制止した。
「しま子、いいんだよ。しばらくそのままで」
「うあ?」
「いいの。そのまま・・・」
そのまま、泣かせてあげて。
だってお岩さん、顔を上げて立ち上がったら・・・
そしたらもう、泣けなくなってしまう。
彼女は、立ち上がったら二度と倒れない。
天に顔を向け、歩き出そうとしてしまう。
涙一滴すらも自分に許さず、歯を食いしばり・・・
自分の傷さえ認めようとはしないまま。
だから、彼女が立ち上がるまであたし達は待っていよう。
ここで一緒に泣きながら。
人に泣き顔を見せることも、潔しとはしない彼女のために、抱き起すこともしないまま。
お岩さんは泣き続ける。
地面に顔を押し付けて、流れる涙を隠したままで。
あたしはその隣に立ち、いつまでも頬を手でこすり続けた。
お岩さん、いくらでも泣いていいよ。
あたし、いるから。
ずっとずっと、お岩さんが泣き止むまでここに一緒にいるから。
絶対、お岩さんから離れない。
そんなことくらいしかできなくて、ごめんね。
ごめんね、お岩さん。ごめんね・・・。