神様修行はじめます! 其の四

・・・聞かれた!! 


あたしは頭を抱えて、口の中で小さく悲鳴を上げた。


どうしようどうしようどうしよう! 誰かこの状況をなんとかして!


ああ! このまま失神できたらどんなに幸せだろう!


神様お願い、時間を止めてー!



そんな心の中の絶叫もむなしく、当然ながら時間は止まってはくれなかった。


凄まじい形相のお岩さんが、幽鬼のようにジリジリと接近してくる。


その分あたしも顔を引き攣らせながら、ジリジリと後退した。



「どういう事ですの?」


「いや、どうって、それはあたしも、何がなにやら恐怖なばかりで・・・」


「セバスチャンには、ちゃんと父親がいましたわよ? ずいぶん昔に亡くなりましたけれど」


「だからつまりね、えぇっと・・・」


「もちろん、わたくしの父とは別人ですわ」


「つまりは、そういうことじゃ。もうお前も子どもではない。察しが付くであろう」



絹糸が腹を決めたような声で、お岩さんに告げた。


あたしは慌てて小声で訴える。



「ちょ・・・なに堂々と暴露してんのよ!?」


「ずっと隠しておったが、もはやその時がきたのじゃ。いずれは知らねばならぬ定めよ」


「だってそれじゃあんまりにも・・・!」


「知らぬまま、実の兄への叶わぬ恋に身を焦がし続けさせるか? それは哀れであろう」


「あ・・・・・・」



あ、哀れだけど! それは哀れだけれど!


でも、事実を知っても、それは全然救いにならないじゃんか!


ならいっそ、知らないままに・・・!

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