神様修行はじめます! 其の四
「嘘よ。そんなの嘘。だって・・・」
「お岩さん・・・」
「だって、あたしの大好きなお父ちゃんは、そんなことする男じゃないもの・・・」
ぼうっとした表情の目が、みるみる潤んだ。
大きく涙が盛り上がり、そのまま両の目尻からつぅっと落ちる。
ポロポロ・・・次々と涙が流れた。
人に泣き顔を見せたがらないお岩さんが、隠すことも忘れて泣いている。
・・・・・・仲の良い親子だった。
おじさんは、とっても良い人で。
強くて、豪快で、明るくて、優しい人だった。
泣いていたあたしに、梅干しおにぎりをたくさん食べさせてくれて。
土の匂いのする、大きくて堅い手の平で頭を撫でてくれた。
あの温かさをあたしは今でも覚えている。
「嘘だよね? お父ちゃん」
「・・・にー・・・?」
「こんなの、嘘だよね?」
「にー。にー。にー」
お岩さんの腕の中で、子猫ちゃんが鳴いた。
流れる涙に合わせて、心配そうに顔を見上げて何度も鳴いている。
「こんなの全部・・・嘘っぱちだって、言ってよぉぉ・・・お父ちゃん・・・」
クシャクシャに泣き崩れたお岩さんが、子猫ちゃんをギュッと抱きしめる。
子猫ちゃんはお岩さんの頬の涙を懸命に舐めて、慰めていた。