神様修行はじめます! 其の四
今のお岩さんは、あの時とあたしと同じだ。
じー様と永世おばあ様の因縁を知ってしまった、あの時のあたしと。
心から信じきっていた人に、何の前触れもなく突然に裏切られて。
確かなもの全部が、足元からガラガラと音をたてて崩れ去った。
じー様の、家族やあたしへの愛情とか信頼とか。
あたしと門川君との関係とか。
あたし自身の、この世に存在する価値まで。
なにもかも確信できる全てが、幻のように消滅してしまった。
あの孤独。あの絶望。あの苦しみ。
あんな思いを、お岩さんが今まさに味わっている。
打ちひしがれるお岩さんの姿が、あたしの涙で霞んで見える。
あたしは、お岩さんになんにもしてあげられない。
おそらくは、あたしが一番あなたの気持ちを理解してあげられるのに・・・。
なのに、なにも、なにも・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・いや。
違うっ。
あたしは、ズズゥ!っと盛大に鼻を啜った。
そしてゴシゴシと腕で強く目をこする。
おい、あたし。泣いてる場合じゃないだろが。
なにが、『なんにもしてあげられない~』 よ。
・・・・・・『する』んだ。
なんとかする。してみせる。絶対、する。
諦めないって、さっき自分で誓ったばかりでしょ?
なのに舌の根も乾かないうちに、なにノンキに鼻水ダラダラたらしてんのよ、あたしは。
そんなヒマないっつーの!