神様修行はじめます! 其の四
常世の島へ
「お岩さんホラ、しっかりして。立って」
あたしはお岩さんの目の前にツカツカと歩み寄り、腕をグイグイ引っ張り上げる。
「証拠がないなら、探せばいいんでしょ? お岩さんがそう言ったんだよ?」
体から力の抜けたお岩さんが、意味が分からない、といった表情でボンヤリとあたしを見上げた。
絹糸も訝しげに問いかけてくる。
「証拠を探す? 岩と遥峰が兄弟である証拠をか?」
「違うよ何言ってんの! 逆だよ、逆!」
あたしは肩口の絹糸を片手でパシッとつかみ、自分の目の前にグイッと持ってきて叫ぶ。
「お岩さんとセバスチャンさんが、兄弟じゃない証拠を探すの!」
だって確証は無いんでしょ?
それはつまり、ふたりが兄弟じゃない可能性だってあるってことじゃんか。
じゃあもう、探すしかないでしょ。あたしはその可能性に賭ける!
「確率は低いぞ? ほぼゼロに等しい」
「等しいだけで、ゼロじゃないんでしょ?」
「それはそうじゃが、だが、小娘よ・・・」
「確かめもしないで、勝手に答えを決めつけられないよ」
あたしだって、あのおじさんがそんな事する人とは思えない。
じー様や永世おばあ様だって、やっぱりあたしや家族を裏切ってなんかいなかったし。
だから今回の件だって、ただの勘違いかもしれないじゃん。
笑い話にできるかもしれない。
でも、何もしないで黙っていたら、確実に悲劇なままなんだ。
セバスチャンさんとお岩さんの心の奥底に、鋭いトゲが深く突き刺さったまま、一生抜けない。